昨日のニュースで、狂犬病ワクチンを巡り、4~6月に接種するとしている規定を通年に広げるよう厚生労働省が見直しを検討しているとのこと。
低迷している接種率向上につなげるのが狙いで、また、複数の自治体から、飼い主の利便性向上や事務処理の負担軽減などのため、接種期間の見直しを求める提案が出ていた背景もあるそうです。

日本国内で狂犬病が撲滅されてからすでに67年。しかし、世界的に未だ流行している感染症です。
感染症に対抗するもっとも有効な手段がワクチン接種です。
狂犬病の防衛手段としても、年1度の接種が法律で義務付けられている狂犬病ワクチンがあります。費用はかかりますが、命を守るためのかかせない予防のひとつです。
今回はワクチン接種のなかでも、狂犬病ワクチンについて掘り下げてお話します。

なぜ義務付けられているのか?

狂犬病ワクチンは、年1度の接種が法律で義務付けられています。
なぜ狂犬病のワクチン接種だけは、法律によって義務付けられているのか?それは、万が一再び日本で狂犬病が発生した時に「人の命を守る」ためです。
狂犬病ウイルスは、一般に感染した動物の咬み傷などから唾液とともにウイルスが体内に入り感染する場合が多く、傷口や目・唇など粘膜部を舐められるといった濃厚接触でも感染の危険性があります。
ウイルスは、人を含む全ての哺乳類に感染します。人への感染源のほとんどが犬とされていますが、これは人と犬との接触が他の動物に比べて多いためであり、犬以外の野生動物も感染源となっています。
発症すると人、動物ともに致死率はほぼ100%といわれ、治療法はいまだないのが現実です。

狂犬病の歴史

日本では、1957年を最後に67年間狂犬病の発生報告はありませんが、それまで200年以上に亘り苦しめられてきました。
同じく一度は狂犬病を根絶したとされた台湾では、2013年、回収された野生のイタチアナグマ3頭の死体から、同地域では52年ぶりに狂犬病の感染を確認したと発表されましたが、遡って調査をすると、2010年からイタチアナグマの間に流行していることが分かり、さらには狂犬病に感染したイタチアナグマに咬まれた犬が狂犬病に感染したと報告されました。これにより、ペットショップの8割ほどが開店休業状態に追い込まれました。
アジアは世界でも狂犬病での死亡者が多いインド、中国を抱えており、海を隔てているとはいえ、日本は常にウイルス侵入の脅威にさらされているのです。

狂犬病ワクチン接種率低下の問題

しかしながら、日本の狂犬病ワクチン接種率は年々下降傾向にあります。
令和4年度の全国接種率は70.9%で、地域によっては50%を切る結果になっています。
ただし、この数字は「登録された犬」の注射率であって、おそらく未登録の犬を含めると45%を下回ると思われます。
世界保健機関WHOが提案している接種率75%に達していないことになります。
「全体の70%に免疫があれば流行は防げる」のですが、今の全国接種率ではその最低ラインの70%を維持することも難しい状況になりつつあります。

未接種の理由は、
●狂犬病はすでに根絶されているから
●副作用が怖い
●海外では禁止されているのに
など様々です。

日本では根絶に成功したものの、世界規模ではまだまだ流行しており、副作用に関しても絶対に出ないワクチンは存在しません。
体調が優れないようであれば接種を延期する、ワクチン接種後は静かに過ごすなどして副作用の影響を少なくすることも重要です。
また、海外で禁止されているという場合でも、実際は「もし発生が確認されればその地域全体の犬を隔離後、必要に応じて殺処分する」ということが飼い主にもしっかりと浸透した上でのことです。

ワクチン接種を悩む飼い主にはこう聞くことがあります。
「もし、日本で再び狂犬病が発生したとき、あなたの犬が感染したらどうしますか?」
「感染した状態で、人を咬んでしまったらどうしますか?」

なぜ日本では法律で義務付けられているのか、それにはきちんとした理由があるのです。
そのことを、飼い主1人ひとりがしっかりと認識し直す時期に来ているのかもしれません。

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