新型コロナウイルスで衛生観念が益々強化されつつある社会ですが、今回はオーストラリアの保護動物として、都市部の公園や住宅地の木の上にも多く住んでいる有袋類のポッサムから、人間や他の動物に感染する感染症についてのお話です。
2020年3月、シドニー北部の女性がポッサムに引っ掻かれ噛まれた後、リンパ線が腫れ、倦怠感、喉の痛みなどを訴えていることから6月NSW州政府は珍しい野兎病の可能性があるとして州民に警告を出しました。
この病気は人から人への感染はなく伝染性が高いが殆どは抗生物質で全快するとして「野生の動物に触れないようにすることがベスト」と注意を促しています。
野兎病はオーストラリアでは過去にかかった人は2011年の2人のみ(両人共タスマニア州住人)という大変珍しい病気で、この2人もポッサムに嚙まれ、又は、引っ掻かれた結果、同じような症状を訴え抗生物質により
回復したということです。
ポッサムはオーストラリアの在来種となり、北半球のリスが少し太ったような夜行性樹上動物で、種類によりサイズは片手に収まるほど小さいものから中型までで、一般家庭の庭の木の上にもよく巣をつくり人によっては巣箱を設置して餌付けする人も少なくありません。
また、犬には食糞という行為があり、ペットがいる場合は自宅の庭や公園で特にポッサムの糞を食べてしまう犬が多いことはよく知られています。
ところが実は、ポッサムの糞には他の動物や人間に伝染する疾病の元になるバクテリアや回虫が多く生息しており、触れることはもとより土足で家に入る習慣のあるこの国では特に気を付けなければなりません。
また、糞に汚染されている土壌やほこりの中で生育するといわれる感染症のヒストプラズマ症やハンタウイルスは、この真菌の胞子を吸い込むことで起こることから、糞には近づかないようにするのが賢明です。
今回の野兎病以外にも結核、レプトスピラ症、斑点熱、コクシジウム症などの感染の可能性も挙げられており、現在までの感染率は非常に低く死亡率はゼロとされていますが、油断せずペットも人も免疫レベルを上げ、飼い主さんはペットの食糞行動管理もしっかりと行う必要がありそうです。