6月10日(土)広島県安芸郡熊野町役場様の全面協力の下、熊野町東防災交流センターにて、【第2回SAEクラブスタディ】避難指示発令!ただちに避難せよ!を開催しました。
昨年10月兵庫県伊丹市の第1回クラブスタディに引き続き2回目の開催で、今回は地元町民が参加し、行政の全面協力という本格的な体験講座として開催されました。

熊野町による消防サイレン吹聴

本日の講師はペット災害危機管理士(R)統括 鈴木清隆講師と熊野町の隣町である東広島市在住の特任講師 上野貴子講師です。

台風3号が近づいている状況で雨も予想されていましたが、当日の天気は晴れ。
気温も湿度も上昇しつつある午前9時45分受付時間前から集合し、開始時間前には全員が揃いオンタイムで開始することが出来ました。さすがに意識の高い受講者さんです。
そして10時開講。本日の講座内容は、ペット同行避難訓練、炊き出し、段ボールベッド組み立て、熊野町からの基調講演を行いました。

ペット同行避難の実体験では、参加町民を含め、非同行参加者(以下A班)と、実際にペット同行参加者(以下B班)として班分け、役割を決め進行しました。
避難の前提条件は前日からの大雨(線状降水帯発生)により当日午前9時30分熊野町役場より避難指示が発令され、ペット同行可能避難所である当センターへ避難をしてきた設定です。

まずはA班が先行し、センターの同行避難を支援する為に入館します。
センター長からの説明を聞き、ペット受入スペースの展開、受付スペース設定、避難者誘導ルートを確認し、避難者受け入れ開始。

A班避難支援開始

B班はご自身の愛犬を連れての避難ですので、本格的な動きになり、緊張感をもって実践していきます。
A班の誘導の下、ペット専用避難スペースへ進み、愛犬をゲージに入れ、「ケージ札」への記入、その後ご自身の受付を行い、愛犬への最低限の世話(給水や目隠し布張等)をし、人の避難スペースである2階ホールで避難完了です。

ペット同行避難のB班

避難完了したワンちゃん達

A班への設定問題として、車椅子の使用。これは町民参加者からの提案によるものですが、実際に災害が発生した際に避難者(人)がケガをして避難してくることも想定されますのでその対応力が重要になります。

A班設定 車椅子避難者

B班の避難が全て完了した時点で次はA班が避難者、B班が避難支援を行います。
A班は同行ペットがいませんので、講師で設定。飼養種は猫、鳥、ウサギ、かわうそ(写真内、左パネル参照)。
犬以外の猫と小動物が避難してきた場合には、ペット避難スペースの配置や動線が重要になります。

B班への設定問題は迷子犬の保護。
猫同行避難者が避難中、首輪をつけた迷子犬を保護。避難所へ預けるという状況を想定しました。
首輪には鑑札、連絡先も記入されていたのでB班の担当が記入されている電話番号へ連絡し、飼い主と繋ぐ対応を行いました。
この様に形式通りに進む事がないのが災害発生時ですので、良い気づきと経験になったのではないでしょうか。

迷子犬保護

同行避難が全て完了し、全員ホールに集合し感想と反省、課題点の抽出をフリートークにて行いました。
色々な意見や感想がでました。町役場の担当者からも「今回はある程度の順番とタイミングを見て受付を行いましたので混乱起こりませんが、実際の災害時はこの環境で避難者が殺到することを想像するとスムーズな運営は厳しくなる。想定以上の事象が起こる可能性を検討する良い機会となった」との感想を頂きました。

その後、全員で炊き出しの設定書を確認。役割を決め調理室へ移動し、カレーを全員で手分けして作りました。
参加者、職員、講師を含め16人前のカレー制作は本格的な炊き出しとして行う為、ガスの大釜でカレー、大鍋でご飯を炊く設定。
皆さんの手際の良さに驚きました。それぞれの役割が完了後、3人1組で段ボールベッドの組み立ての為ホールへ移動。その間のカレー煮込みは町職員さんにお願いしました。

ガスの大釜でカレー作り

職員さん見張り

段ボールベッドの組み立ては町職員さんからレクチャーを受けスタート。
出来上がった段ボールベッドは寝心地良く、重量も300kgまで耐えられるとの事で安心して使用できるものでした。

段ボールベッド組み立て

完成品はとても頑丈

その後、プライバシー保護の為の衝立組み立てを行い、スペースも確保できている為、従来からの体育館での雑魚寝とは違う環境になっている事を皆で実感。
しかし、その分避難所の収容人数は減らさないと対応が困難であることから、在宅避難を始めとする分散避難を検討する良い機会となった様です。

衝立を設置

続けて災害特に地震等により上下水道が停止した際に使用する簡易トイレの説明を頂きました。町内3箇所の防災交流センターに2機ずつ配備されているとの事でした。

簡易トイレ

いよいよ食事タイムです。ここではスプーンが無いので自作する課題を設定。1つの牛乳パックから4本のスプーンを各自で作り使用しました。
天気が良い為、外のテラスへ運び食事スタート。ご飯、カレーも残ることなく全て食しました。本当に美味しかったですね(笑)

その後、全員で片付けを行い、午後2時ホールにて熊野町役場からの基調講演を頂きました。
この熊野町は平成30年西日本豪雨で被災し、多くの方が亡くなった町でもあります。
その時の状況を職員さんが撮影した普段では見る事ができない貴重な映像を拝見させて頂き、土砂災害の恐ろしさ、救助の難しさ等、心にささるお話を拝聴しました。
また、災害に対する平時からの取組等、他の市町村の模範となる町である事は間違いないと言えます。
約40分に及び基調講演は参加者の皆さんの心に届いたと思います。

そして最後の設定を行います。内容は施設玄関前に汚物が起きっぱなしになっているという一般避難者からクレームが発生する設定です。
この事はペット同行避難している飼養者にとってこれからの避難生活を脅かす重大インシデントとして捉え、全員で現状確認し、対策を講じ、避難所責任者(センター長)へ報告を行いました。

汚物発見

本来、避難後落ち着いてから「飼い主の会」等を結成しルール作成を行う流れとなりますが、今回の場合、避難受付中に起こりうる事象として設定したため、皆さんにとってありうる事象として大いなる気づきとなり、今後地元での避難所運営に役立てるかと思います。

午後3時、全ての設定を終了し、閉講式。個々に受講証明書とアンケートをお渡しし、皆さんの感想と講師からの一言で終了しました。
終了後も皆で感想を言い合い、今回体験した事やこれからの活動について話がたくさんでました。
これらはSAEの目指すクラブスタディの目的である「同じ課題意識をもった仲間が集まり、人と繋がっているという連帯の中で、互いに励まし合い、協働学習を通して、自らその課題を解決する力を身につけていく」を第1回に引き続き今回も実践知の学び場としてクラブスタディが機能していると実感しました。

これからの皆さんのご活躍を期待しています。また、次回のクラブスタディへのご参加をお待ちしております。皆さまのご協力でケガなく無事に終了できたことに感謝しております。

受講生と町職員、講師で記念撮影

【参加者の声】

■避難開始から避難所での役割分担などを通して、実際に行動して感じたこと
●次から次へと訪れる避難者、しかもペットの種類等もそれぞれ異なり、どうしても時間がかかってしまった。ペットを飼っている方が対応してこのスピード。ペットに興味のない方が担当するともっと遅くなるかもしれない。ペットを飼っている人は避難したら積極的にペット避難者受付など、ペットに関わる運営に携わるべきだと感じた。
●班のメンバーと分担と流れを確認した後、ペット同行避難者の受付をしたが、確認すべきことや注意すべきことが多く、また、色々な設定のペットたちが来たので良そう上に大変だった。リーダーの役割を担っていたが、全体の流れを確認する余裕がなく、そこが反省点だった。
●本当の発災時には混乱の中で余裕がない対応になると思うので、今回の体験を思い出しながら落ち着いて行動できるようになればと感じました。
●避難所では様々な問題が突発的に発生し得ることが実感できた。しかし、事前に全ての問題に対して準備しておくことはできないので、問題への柔軟な対応能力(飼い主個人、飼い主の会、避難所運営の各々の立場)を平常時に高めておくことが重要と感じた。

■炊き出し、段ボールベッド組み立てなどの実践を通して感じたこと
●炊き出しも組み立ても役割分担をはっきりすることで円滑に行くことが良く分かった(段ボールベッド組み立てはグループ内で役割を指示し、上手く分担できました)
●初めて大きな鍋とガスで米を炊いたが、講師から時間などを教わることができた。途中場を離れたため、実際の火加減を見ることは出来なかったが、家に帰ったらまずやってみようと思った。
●過去の災害時の状況を映像で見たり聞いたりしたことはあっても、やはり実際に体験することで行動がイメージしやすくなると思いました。また、いつもと違う環境ではペットも不安から行動が変わるということが実感できました。
●「自らやってみる」ことの重要性を再認識した。普段は便利で快適な生活を当たり前に過ごしているが、発災時にはサバイバルが始まることが想像できた。また、炊き出し、段ボールベッド組み立て等の避難所設営・運営(飼い主の会を含む)は、自治体やボランティアではなく避難者の中の実施可能な方が行うことを住民に知っておいていただく必要があり、そのためには地域の防災訓練が重要な位置付けにあることを再認識した。

■今回の講座を通し、災害時における避難所でのご自身の役割、行動などについて、出来ることは何かなど気付いたこと
●今回の体験で避難所運営の大変さが分かった。また多少なりとも知識を得ることができたので、少しでも上手く回っていない所を助け、円滑に避難所運営が回るように協力したい。また同時に、もっとペット防災に関する知識を得て、ペットが安心して避難所生活ができるような行動がとれるようになりたい。
●私はペット災害危機管理士(R)有資格者として、これまで学んだこと(体験)を忘れることなく、まずは振り返りとまとめをして、行政とつながり意見を述べていきたい。そして、飼い主さん側にももっと防災に関する意識を持ってもらう内容の勉強会を開いていこうと思う。
●役場の職員さんたちも被災者であり、過去に経験したことが無い状況で対応することになるので、こちらから協力したいことを伝えて、コミュニケーションを取りながら動くことが大切だと感じました。

■熊野町役場の講演を聴講して感じたこと
●災害がまさに起こっているときの映像が非常にリアルでとても印象に残った。特に大原ハイツの土砂崩れの現場は、災害が起こるとあんなにも静かになるのかと、その静けさが怖かった。
●実際にあった災害について、当時の写真や動画を紹介していただき、現場の悲惨さや厳しさを知った。あの場にいたら私は何をできるだろうかと考えてしまった。貴重な時間をいただきありがとうございました。
●12人もの方々が命を落とすという悲痛な経験があったからこそ、行政と町民の皆さんが一緒になって、防災交流センターのような場をつくるという取組みができているということが伝わってきました。同じことを繰り返さないように、多くの方に知ってもらう必要があると感じました。
●防災交流センターはペット同行避難を考慮した飼い主にとってありがたい避難所であり、このような施設が全国に広まって欲しいと感じた。

 

SAEクラブスタディの今後の開催予定は決定次第、受付開始します。
随時更新しますので、通学講座・1Dayセミナー日程ページをご参照ください。
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