心の治療者としての動物

心理学者の河合隼雄は「人の夢にはよく動物が出てくる」と主張しました。夢は、その人が拒否したいもの(影)との再会の場とされます。
河合らは、夢に動物がいるのは、動物たちが“心の治療者”として人類の心の深い場所に普遍的に存在しているからである、と説きます。

もともと自分の心の深淵に棲んでいる動物が、ペットとの別離にともなう悲嘆によって活性化し、飼い主は夢に動物を見ます。
すると、飼い主は、別離したはずのペットとの再会を果たすことができ、一種の「赦し」の感覚を得ます。
これにより飼い主は、ペットとの別離における自分の責任の受容を開始することができるようになるのです。

臨床心理士の山本力らの研究の結論のとおり、悲嘆夢は
①喪失との直面
②別れのやり直し
③絆の結びなおし
④共生の継続
という4つの機能を持っています。

飼い主は悲嘆夢から覚めた時「自分が飼い主でよかったのだ」と感じ、そこまでに通過してきた無数の怒りや無力感のすべてに大切な意味があったことを、はじめて実感するのです。

また、ペットの姿、声、足音、臭いを感じる空想・幻想(幻視、幻聴、幻臭)は、別離後一週間程度で感じることが多いようです。
この空想・幻想の持つ効果も夢と同じです。飼い主は、別離してもペットとの関係性が喪われたわけではないことを理解するのです。

このように空想形成・幻想は、飼い主が受容にたどりつくための真に重要なプロセスです。
この体験が長期化する場合は、精神疾患の可能性がありますが、短期間ならば、それは、心の健康にとってとてもよい体験であるといえます。

それにしても、ペットとの別離が、じつは、自分の心の奥底に眠っている治療者としての動物との出会いにつながっているという理論そのものに温かなものを感じるのは、私だけでしょうか。

◀◀◀獣医師から学ぶペットロスの心理とはvol.19
この記事を読む

 

 

▶▶▶獣医師から学ぶペットロスの心理とはvol.21
この記事を読む

 

 

「獣医師から学ぶペットロスの心理とは」一覧に戻る

 

ペットとの別れを悲しいだけのものにしないためにペットロスを正しく理解する

「ペットも家族の一員」と考える飼い主が増えました。それに伴い、ペットとお別れしたときに何かしらの肉体的・精神的不調を訴える人が増えています。ある保険会社の調査によると、「突然悲しくなり涙が止まらない」「疲労感、虚脱感、無気力、めまい」などのペットロスによる症状を1ヶ月以上も体験した飼い主は半数にも上ります。
何故このようにペットロスによる症状が現れるのか、どのように対処していけばよいのかを、正しい知識と理論から学び、ペットロスに対するセルフマネジメント能力を身につけてみませんか。

ペットロスケアマネージャー通信認定講座とは
いつか必ず訪れるペットとの別れをつらく悲しいだけの出来事にしないために、ペットロスに関する心理的基礎知識と理論を学び、飼い主心理の理解と悲しみから立ち直るためのセルフマネジメント能力を身につけます。
 詳しくはこちら

 

メルマガ登録 資格とセミナーの最新情報をゲット★SAE公認動物講師からのプチ講座・セミナー情報、獣医師からの健康管理注意点など飼い主様に役立つ情報配信中★
メルマガサンプルはこちら
(アドレスだけで登録できますので是非お気軽に)