キューブラー・ロスの「受容」との違い

「あきらめ(受容)」とは、別離したペットの飼い主としてふさわしい自分になる(戻る)ためのスタートラインに立つという意味です。

精神科医キューブラー・ロスは、有名な「死の5段階」を提唱し、その中にも「受容」があります。
この「受容」は、死に向かう患者が到達する最終段階のことで、次のような特徴をもっています。

“自分の「運命」に気が滅入らなくなり、憤りを覚えなくなる”

この考え方を本シリーズの解説と比較すると、「運命」に焦点が当たっている点で「第4段階 怒りと不当感」からの離脱が該当すると思われます。
つまり、キューブラー・ロスの提唱する「受容」は、第5段階以降の他者や自分への怒りまでは受容できていない状態、とも言えるかもしれません。
また、本シリーズの「受容」は、生きている飼い主の心身の状態を指しているため、キューブラー・ロスの言う「受容」とは異なります。

飼い主の心的発達と注意点

第10段階の飼い主は、高い心的な発達を遂げています。
自分がペットから学んだことを整理して他者に伝え、それにより、今後ペットを喪失する飼い主の悲嘆を最小限にしたり、悲嘆の中にある飼い主の支援をしたくなります。
このようなことをしたいと思う時、省みなければならないポイントがあります。
それは、自分の中の敵対的心理です。
反ペットショップ、反他団体、反行政、反動物病院・・・。
そのような人は、第10段階に到達していない可能性が高く、その活動は、自分の喧伝、否定、攻撃のためのものとなる恐れがあります。
第10段階は、悲嘆とは個有のものであり、自己の内部で静かに消化する必要がある、という理解が求められます。
悲嘆のプロセスの中でもっとも自己正当化しやすい第4から第6段階という“怒りの3段階”。
これらにていねいに向き合えてきたかどうかが、ここで試されます。

 

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