先月、アメリカでアメーバの感染で引き起こされる原発性アメーバ性脳髄膜炎によって幼い子どもが命を落とす痛ましい事故が起きました。
アメーバはネグレリア・フォーレリ(フォーラーネグレリア)と呼ばれているアメーバで、日本国内でも少ないながら死亡例が報告されています。
今回は、この痛ましい事故から愛玩動物保健衛生士より人にもペットにも恐ろしいアメーバについてお話します。

ネグレリア・フォーレリの考えられる感染経路

このアメーバは、湖や温泉など温かい淡水の環境で繁殖するとされていますが、今回検出されたのは噴水の水からで、日本国内では水道水などからも検出されているそうです。
普通に飲む分には胃酸のおかげで影響を受けないものの、水遊びや水道水を利用して鼻うがいをするなどして鼻腔から体内に入り込むと、感染、発症してしまうことがあるとのことです。

そもそも「アメーバ」?とは

では、そもそもアメーバとはなんなのでしょうか?
アメーバ分裂、といった言葉でなんとなく知っているものの、実際何?と聞かれると困ってしまいますよね。

アメーバは、単細胞で基本的に鞭毛や繊毛を持たず、仮足で運動する原生生物の総称で、他にも、仮足を持つ生物一般や細胞を指してこの言葉を使う場合もあるほど、生物としてだけではない様々な意味合いを持っています。
ほとんどの場合、人と関わることのない原生生物ですが、今回問題となったアメーバのように、一部病原性をもつものが存在しています。

アメーバによる人獣共通感染症もある

病原性もつものには、人獣共通感染症でもあるアメーバ症として赤痢アメーバが挙げられます。
このアメーバには、栄養型(増殖型)と囊子型(シスト)とがあり、通常感染源となるのはシストの方で、汚染された食べ物などを介して経口的に感染します。
その症状は、人では腸アメーバ症と腸外アメーバ症があり、大腸・直腸・肝臓に潰瘍を生じ、1日数回~数十回いちごゼリー状の粘液血便をしたり、断続的な下痢、腸内にガスがたまる、痙攣性の腹痛などがあげられます。
通常は発症しても軽症であるが、衰弱により死亡することがあり、世界では4~10万人がこの病気で亡くなっています。
また、原虫が門脈を経由し肝臓に達した場合、腸外アメーバ症を発症します。

動物(サル、ネズミ、ブタ、猫、犬など)の場合は一般に無症状ではあるものの、稀に犬で激しい下痢を起こすことがあります。

日本でのペットでの発生例はないけれど

しかし、幸いなことに日本では身近にいる犬や猫などのペットから、このアメーバが発見された例はまだないそうです。

とはいえ、赤痢アメーバ症だけで見ると、年間報告数が1000例を超えていてペットからの感染はないものの、日本で最も症例の多い原虫感染症と言われており、感染症法では五類感染症に指定されています。
また、感染者における発症者の割合は途上国・先進国共に10%程度であることから日本にも感染者が1万人規模で潜在すると考えられます。

赤痢アメーバのシストの消毒には、0.01%次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬や、0.1%塩化ベンザルコニウムへの30分間浸漬、熱にも弱いため、50℃10分間や90℃数秒間などで死滅すると言われています。

病原体の消毒には適切な消毒手段と消毒濃度があります。
全てを一度に覚えるのは大変ですが、気になった時に一つひとつを覚えるようにしていきましょう。

 

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