2019年8月、飼い犬に傷口を舐められて感染症を発症し四肢切断、という衝撃的なニュースがありました。
「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症」と呼ばれる感染症によるもので、2018年にも同じように飼い犬に傷口を舐められたと思われる方が発症、やはり四肢切断を余儀なくされています。
上記2件は、どちらもアメリカで起きたことですが、実は日本国内でも、1993年から2017年末までに計93例の報告があり、そのうち19例が亡くなるという、他人事ではない感染症なのです。
この感染症について、愛玩動物保健衛生士が解説します。

感染原因は?

犬や猫などに咬まれたり引っ掻かれたりした傷からの感染や、舐められるといった接触からの感染が原因とみられています。
(もっと詳しく知りたい方は、ぜひ厚生労働省のHPでこの感染症を検索してみてください)

症状は?

発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などといった、一見すると風邪や食中毒、インフルエンザとも思える症状が出ます。
しかし、重症化すると敗血症や髄膜炎を起こし、その結果、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血性ショック、多臓器不全に進行して死亡することもあるようです。
患者のうち、糖尿病、悪性腫瘍などの基礎疾患を有する方が約半数、健康な方でも免疫が落ちているときなどに感染・発症することが確認されています。

どうすれば防げるのか?

この菌は、犬猫の口の中に普通いる常在菌。
排除することもできなければ、ワクチン等も存在しません。

一番は咬まれたり引っ掻かれたり、過剰に舐められたりと、過度な接触は避ける事です。また、触れ合った後は手洗いなどを確実に実行するようにしましょう。
消毒には、手指消毒用のアルコールや塩化ベンザルコニウムが有効です。

万が一受傷した時には早期に医療機関を受診しましょう。
消毒や抗生物質の投与などを受けていれば重症化しない可能性が示唆されていますので、犬猫に咬まれたり引っ掻かれたら早めに受診するよう啓発することも重要です。

スキンシップと過度な接触の線引きを考える

飼い主さん自身もじっくり考えてみましょう。
色々な飼い主さんとお話する中で、「どうして舐めさせちゃいけないの?愛情表現なのに」と仰る方は一定数います。
中には、「人間の口の中の方が細菌が多いのに気にする必要ある?」と仰る方もいます。

では、少し想像してみてください。
自分の飼われているペットが他の方を舐め、それが原因で感染症を引き起こし、四肢切断や最悪お亡くなりになる可能性があるということを。

飼い主さんが過度な接触を良しとすることは、フレンドリーな子は他の人にも同じように接しようとします。
その結果、重大な事態を引き起こす可能性があるということを、飼う人間の責任として、知っておかなくてはいけません。

もちろん、過剰に恐れる必要はありません。
犬猫たちからうつる病気があることを正しく知り、正しく恐れ、適切な距離感で接するように心がけましょう。

 

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