互いに相手を見る際、顔は人にとって重要な要素となりますが、犬にとってはそれほどの重要性はない、というヨーロッパなどの研究チームによる視覚コミュニケーションの研究結果があります。
「目を合わせる」「目を逸らす」ことが犬にとってどんな意味を持つ行動なのか、犬猫行動アナリストが解説します。
「目を逸らす」=反省している、ではない
いたずらをしたり、出された指示とは違うことを犬がしてしまったときに、申し訳なさそうに目を逸らしたり、顔を背けたりする犬がいたとします。
このとき、飼い主さんは大きな声を出したりせず、ただじっと怒った顔をして犬を見ていただけとしましょう。
人である私たちは、「顔の表情から相手が怒っている」ことを感じ取り、「申し訳ないと感じているのだな」、と思ってしまいます。
これは犬を人のように捉えているからです。
では犬は本当に申し訳ないと思っているのでしょうか。
実際のところは、目を逸らしたり、顔を背けるのは犬が用いるある種のボディランゲージであり、じっと見てくる飼い主に対して、「敵意は持ってないですよ?落ち着いて下さい」とサインを出しているだけです。
人と犬で異なる「目を逸らす」の意味
というのも、相手をじっと見る行為は、動物の中では基本的に威嚇行為を意味するからです。
日頃は目を合わせることとその後に待ち受ける嬉しいことを結び付けて、目が合うことを喜ぶ犬たちも、飼い主から発せられる怒りのサイン、例えば体に力が入っている、肩があがる、前のめりの姿勢といった些細な変化と、いつもとは違う状況を感じ取って落ち着きを失います。
そのために、相手に落ち着いてもらうための行動を取るのです。
それが目を逸らしたり顔を背ける行動に結びつきますが、人は目を逸らすことを「後ろめたい、反省している」と受け取ってしまうために、「反省してる、許してあげよう」となるわけです。
理解の食い違いが招く危険
この些細な食い違いは大きな危険をはらんでいます。
飼い主の留守中、ゴミ箱や台所を漁ってしまう犬が、帰ってきた飼い主に対して反省している態度を見せ、飼い主がそれに対して「反省しているから許してあげよう」と、改善策を怠っていると、いずれ誤食による命の危険に晒されることでしょう。
叱られて反省しているし次は気をつけるだろう、という考えは犬には当てはまりません。
もちろん、してしまった行為に対して叱っても意味はありませんから、漁らせないこと、を念頭に置かなくてはいけません。
ゴミ箱は蓋つきにする、台所のゴミはこまめに捨てる、もしくは台所に入れないようにする、食品などは犬が開けられないような場所に収納するといった対処法とともに、ヒマをつぶせるようなおもちゃを与える、留守番させる前にたっぷり遊んで体を動かしてあげる、サークル内で留守番できるようにトレーニングするといったことも必要となるでしょう。
理解が異なることを意識しよう
このような些細な食い違いは、人も犬も感受性が高い動物なだけに起こりがちです。
しかし、その些細な食い違いで命の危険が引き起こされてしまっては悔やみきれません。
正しく犬の言葉を読み解けるようになりましょう。
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