ワクチン接種者の増加と、マスク着用の日常化によりコロナに対する不安は減ってきているのではないでしょうか。

このコロナ対策の影で軽視されがちと言われているのが、本来これから徹底しないといけないインフルエンザ予防対策です。
人も動物もワクチン接種で防げる感染症はいくつもあり、インフルエンザを予防するもっとも効果的な方法もワクチンです。

ワクチン接種とは、動物を飼養するなら当たり前に行なわなくてはいけないことの一つですが、その理由や重要性に不安や疑問を感じている飼い主さんも少なからずいらっしゃいます。

今回は愛玩動物救命士より、動物に携わる人間にとってもっとも聞きたくない単語の1つ「パルボウイルス感染症」を例にとって、いま一度ワクチン接種の意味を一緒に考えてみましょう。

パルボウイルス感染症 症状・特徴

パルボウイルス感染症は犬猫ともにかかる病気ですが、ここでは猫パルボウイルス感染症についてみていきましょう。
(犬パルボウイルス感染症は後述します)

猫パルボウイルスに感染すると、免疫系が損なわれる猫汎白血球減少症といった病気になります。
潜伏期間は7~14日で、初期症状で表れるのが嘔吐(日に5~6回吐きます)、進行とともに吐く回数はさらに増加し、その後下痢を併発します。
発症後5日目あたりから血便になり多くは7日以内に死亡します。

ワクチン未接種の若い猫は、死亡率が高く(感染力が非常に強いので飼っている猫が全滅することもあり)、成猫でも感染しますが特に、子猫の死亡率は75~90%になるというデータもあります。

運良く回復した動物は治癒後、便尿に大量のウィルスを数週から数ヶ月にわたり排泄し、このウィルスによって感染がひろがっていくことになる、とてもやっかいな感染症です。

やっかいその①「感染経路」

感染した猫の糞便、ノミなど、ケージ、食器、フードそして被毛にいたるまでが感染経路となりえます。
かといって、「家の中で1頭だけで飼っているので大丈夫」と思うのは間違いで、外を出歩いた飼い主さんの靴底にウィルスが付いてきて感染することもありますので、油断できません。

やっかいその②「菌の強さ」

このウィルスは非常に強く、屋外・屋内を問わず通常の環境では最低でも3ヶ月~1年以上生存できる上に、通常の消毒薬、紫外線などは無効、熱湯をかけても感染力はなくならないのです。(アルコール、クレゾール、逆性石鹸などは効きません。60℃で1時間加熱しても死滅しません。)

適切な消毒薬を適切な方法で使用することにより、感染拡大のリスクを減らすことが出来ますが、消毒だけで感染のリスクを排除することは非常に困難です。

予防対策は?

では、このやっかいな感染症から猫を守るにはどうしたらいいのか?
それは、「ワクチン接種」です。
この病気は、ワクチン未接種で免疫のない個体への感染率はほぼ100%といわれていますが、逆に、きちんとワクチンを接種していれば、防げる病気なのです。

また、このパルボという病気は「犬パルボウイルス感染症」という病気もあります。
犬パルボウイルスと、猫パルボウイルスは遺伝子的に近縁であるとされ、感染力の強さ、症状、致死率なども同様なら、ワクチンで予防できる点も同様です。
違いを挙げるとするならば、犬では1歳未満での発症率が高いのに比べ、猫ではどの年齢でも発症する点でしょうか。

ワクチンの接種の意義について

このように、「ワクチンで予防できる病気」なのにも関わらず、ワクチン接種による副作用ばかりを気にしてワクチンを接種させない飼い主が増えてきています。

確かにワクチン接種には副作用という問題がついてきます。実際に体調を崩した、容態が急変して亡くなったという例もあります。
しかし、その副作用を最小限に抑えるために、体調の変化の確認や、接種後の運動制限、シャンプー制限が言われているのです。

感染症は、一個体で終わることではなく、適切な対処ができないとどんどん蔓延していく怖い病気です。
ワクチン接種というのは、自分の犬猫を守る為だけでなく、他の犬猫をも守ることであることを認識し、飼い主の責任としてしっかりと行うようにしましょう。

もちろん、体調が思わしくない、高齢で体力が心配、持病があるなど様々な理由からワクチン接種が行えない子もいるでしょう。
しかし、その判断は飼い主が勝手に行うのではなく、獣医師としっかり話し合った上で判断することです。

この機会に、いま一度、ワクチン接種とはなんのためにするのかを考え直してみましょう。

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