先日、大船渡市の山林で発生した火災は2月26日に発災し、3月9日にようやく鎮圧が宣言され、長期にわたり甚大な被害をもたらした災害として記憶に新しいかと思います。
まずは、被災された皆様への追悼とお見舞いの意を申し上げます。

また、本記事発信の時点でも、岡山と愛媛において山林火災が発生しており懸命な消火活動が行われています。
今年に入り各地で相次いで発生している山林火災、その危険性と避難に関して、ペット災害危機管理士(R)からお伝えしたいと思います。

今回の山林火災の概要と危険性

此度の火災によって市の9%の面積にあたる2900haが焼失し、平成以降の日本国内にて最大の山林火災となりました。
また、この火災が発生する前にも、19日から25日にかけて同市及び隣接する陸前高田市にて2件の山林火災が発生しており、300ha以上の被害を出しています。
今年は降雨量が例年と比べても少ない極度の乾燥状態であり、さらに当日は強い風によって延焼を加速させました。
更に、山林火災ということもあり傾斜の厳しい斜面が多く、車両が入れず給水ホースの延長が必要となったり、付近に川などの水場がなく消火用の水源を確保できなかったりと、地上での消火活動が困難を極めたために後れを取りました。
被害例として、山林部から20m程離れていた家屋が全焼した原因が風による飛び火とも考えられています。
ある程度被害の進行経路が予測できる洪水や台風などと異なり、気候や環境次第では被害の想定を大きく覆す可能性があるというのも、火災ならではの恐ろしさといえます。

ペット飼養者の避難状況

ペットと暮らす人の避難状況ですが、避難指示が出された当時の避難所では、ペット同伴避難(※1)が困難になっていました。
ペット同行避難(※2)推奨という風潮は徐々に浸透しつつあり、実際に多くの飼い主がペットと同行避難をしましたが、避難所のペットの受け入れ態勢が十分に整っていなかったというのが実状です。
その結果、車中泊避難を余儀なくされたりと、避難による心身の疲労やストレスからの健康被害が危険視され、支援にあたった保健衛生士や看護師が車中泊避難をする避難者へ声掛けなどのケアを行う様子も注目されました。

ペット一時預かり・同室避難受け入れ事例

そのような状況を受け、行政と地元の動物愛護団体を中心として物資の支援の他に、一時的なペット預かり支援を実施しました。
一時預かりによって、飼い主も避難所内での生活が可能になり、離れ離れにはなってしまいますが車中泊避難で掛かるペットの負担も減らせるという部分から、飼い主とペットの精神的負担の軽減につながりました。

さらに、一時預かりと並行して同伴避難に対する対応も進められ、3月6日以降に宮古市の宿泊施設や仮設商店にてペット同伴避難を可能とし、ある施設ではペット同室避難(※3)の受け入れも開始されました。

避難指示が出された初期にはペットの避難対応が追い付いていない部分はありましたが、避難者の声を汲み取り、預かりや同伴避難施設の開設など、機転の利いた対応からペット飼養者への手厚い援助が見受けられ、ペット防災に対する意識向上が実感できる事例でした。

今後のペット防災

今回の災害で行政や愛護団体、宿泊施設などの多くの方の連携と尽力によりペット同伴避難を実現されたことから、「避難所運営は行政の仕事」という頼りきった考え自体を改めていくことが重要と考えられます。

宮古市の避難所が開設されるも、まだまだ頭数に対して同伴避難先は足りてない状態でしたが、今回の実例をもとに、行政・民間団体・民間施設の連携体制を平時から整えることで、今後のペット同伴避難者の受け入れ規模拡大が期待できます。

また、飼い主の中には吠え声や分離不安から一時的な預かりや同伴施設の選択ができず、車中泊避難などを選ばざるを得ないケースもあり、飼い主側も様々な避難の形を想定した防災トレーニングや備えを求められます。
昨今、周囲を気にせずに飼い主とペットの負担を減らせる在宅避難も注目を集めていますが、今回のように避難せざるを得ない災害があることを忘れてはいけません。

情報収集の重要さ

今回の災害を経て、ペットと共に避難生活を送るうえでの情報収集の重要性というのも浮き彫りになりました。
ペットと同伴避難が可能な避難所が開設されたとしても、その情報自体を手に入れることができなくては、何も知らずに車中泊避難などで負担の大きな避難生活に身を置いてしまうことがあります。
最寄り避難所のペット受け入れ態勢を聞くなどの事前の情報収集も忘れてはいけませんが、避難生活中も最新の情報を得るためにラジオや情報共有掲示板を活用しましょう。

また今回の避難者の中には、支援にあたっていた愛護団体スタッフより同伴避難施設の存在を知ったという避難者もおり、情報収集のためにはペット関連の支援者との対話も有効な手段と言えます。

(※1)避難所にて飼い主がペットの飼養管理を行うことを意味する。しかし、同じ空間内での飼養を意味する言葉ではないため、飼養形態は各避難所のルールに従う必要がある。
(※2)飼い主がペットを連れて避難を行うという行動を指す。
(※3)飼い主とペットが、同じ居住空間内で避難生活を送り、飼養管理をする避難形態を指す。

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