サル痘の国内感染拡大がニュースになっています。
2022年7月に日本国内で感染者が初確認され、今年に入ってから感染が拡大し、4/11(火)時点で106人が確認されました。
このうち今年の感染者は98人で、海外渡航歴のない人が多いということです。

これまでの生活のなかで馴染みのない病気や感染症には「知ることが重要」ということで、少しだけその感染症について愛玩動物保健衛生士からご紹介しましょう。

人獣共通感染症(動物由来感染症)の1つである「サル痘」

1980年に根絶された天然痘に似た「サル痘ウイルス」に感染して起きる病気です。

天然痘とは、伝染力が非常に強く、紀元前から死に至る疫病として人々から恐れられていました。
また、治癒した場合でも顔面に醜い瘢痕が残るため、忌み嫌われていたとの記録が残っています。

その感染症に似たサル痘は、1958年にサルで初めて確認されたため、「サル痘」と命名、その後、1970年に初めてアフリカで人への感染が報告されています。

サル痘という名前ではあるものの、主にリスやネズミなどのげっ歯類がウイルスを持っていて、かまれることで感染します。
そのため、アフリカに行って現地にいるウイルスを保有しているであろうげっ歯類に咬まれない限りは、日本国内においては今のところ動物から感染する可能性はゼロに近いでしょう。

もともと、中央アフリカから西アフリカにかけて散発的に流行する感染症でしたが、昨年に入ってサル痘流行国への海外渡航歴のないサル痘患者が欧州、米国等で報告されるようになってきたのが始まりです。

サル痘の症状と感染ルート

サル痘の潜伏期間は通常7~14日(最大で5~21日)で、高熱がでるのが症状の1つ。
他にも、顔や手に発疹が出たり、リンパ節が腫れたりといった症状も見られます。
その後、2~4週間で自然に治ることが多いとされています。
今回流行しているのは、「西アフリカ型」と呼ばれる比較的弱いウイルスのようで、致死率も低く、先進国では今のところ死亡例はないということです。

人から人への感染は、主に皮膚と皮膚の接触で感染します。発疹やかさぶたに触れたり、感染者の寝具を介してうつったり。
ただし、天然痘や新型コロナウイルスと違い、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染は、長時間同じ空間で飛沫を浴び続けない限りは起きにくいと考えられています。

サル痘への対策

天然痘に近い、と聞くと、今の40代半ばより上の世代の方々は、天然痘ワクチンを打ったことを思い出すかも知れません。
ウイルスを構成するタンパク質がほぼ一緒なので、天然痘ワクチンはサル痘にも効くとのことで、医療従事者などへの接種が検討されていますし、天然痘ワクチンの接種をしたことがある方は、感染を防ぐことが出来るか、感染しても症状が軽いそうです。

もちろん水際で入ってこないようにするのが一番ですが、海外との行き来が日常になってきている現在、それはなかなかに難しいことでしょう。
また、海外にいって感染してしまった場合に、冷静に対処できるようにするためにも、知識は持っておいた方がよいでしょう。

あげるときりがない人獣共通感染症(動物由来感染症)ですが、ニュースなどで取り上げられた時に少し学ぶだけでも、充分です。
様々な感染症が身近にあることは新型コロナウイルス感染症でも痛感できたことでしょう。
正しく学び、正しく恐れ、正しく対処する。これを忘れずに備えていきましょう。

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