第4段階 怒りと不当感

第1段階から第3段階までに飼い主の心身に起きたことを簡単に整理してみます。

現実感覚麻痺

現実の受容の否認

パニック(現実に対する恐怖)

麻痺も否認もパニックも非現実的な反応のように見えて、じつは、それがペットとの別離という現実への正常な適応の過程になっています。
つまり、飼い主は、パニックを起こしながらも、「ペットとの別離とは恐怖に値する現象なのだ」という無意識的理解にたどりついているわけです。

この恐怖感が次に導く反応が「怒りと不当感」です。
これは、「不当な苦しみを負わされた」という激しい怒りのことです。
とくに交通事故や急病による突然死に遭遇した場合、悲嘆は、強まる傾向にあります。

ここでの「怒り」には、明確な特徴があります。
交通事故の加害者や「医療ミスをされた」と飼い主が思いこんでいる獣医師など直接責任を負う人物がいる場合を除き、それは、運命や神に対する「怒り」なのです。
たとえば、「神様は、ひどい。なんでウチの子だけ・・・」と感じるなどが該当します。

このように第4段階の怒りとは、運命、神仏など目に見えず、手に触れることもできず、抗議する行為が虚しく思えるほどに圧倒的で巨大で、理非を超えた存在に対して向けられる感情と言えます。

“大声で泣くことは恥ずべきふるまいだ”
“ペットと別離したことで泣くのは、成人にあるまじき子供じみた行動だ”
“ペットが先に死ぬことをわかった上で飼い始めたはずだ”
など文化的、社会的な条件によって、外部への怒りの表出が妨げられると、怒りは、自分自身に向けられることもあります。

このように発散を停止させられ、内攻した怒りは、心身の衰弱が重なると自分や関係者に対する深刻な打撃となるため非常に危険です。

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