ペットフードの改良や動物医療の発達により、年々ペットの平均寿命は延びています。
喜ばしいことですが、寿命が延びたことによりペットにとって生きているうちの半分が高齢期に当たります。
犬の平均寿命は12~14歳、人間に換算するとだいたい64~72歳です。
小型犬のほうが大型犬より長生きし、今後もますます長寿犬も増えると思われます。今回は犬のシニア期に備えるお話です。

ギネス公認の世界最高齢犬が更新される

ギネス記録として公式に登録されているのは、オーストラリアン・キャトル・ドッグのBluey(ブルーイー)で、29歳5ヵ月(1910年 – 1939年)という世界最高記録を持つ長寿犬として知られてきました。
それが、2023年2月、更新されることとなりました。
ポルトガルに住む、ラフェイロ・ド・アレンティジョという犬種の“ボビ”が2023年2月1日現在、30歳266日で『存命中の最高齢の犬』、および『史上最高齢の犬』として認定されることになったのです。
ボビは、1992年5月11日にポルトガルのレイリアにて農園を営む家族のもとで生まれた現在も同じ場所で生活をしています。
ボビの誕生日はしっかりと確認、登録されており、その年齢はポルトガル政府に承認されたペットのデータベースにも登録されているそうです。
ちなみに、これまでの『存命中の最高齢の犬』の記録は、アメリカ、オハイオ州カムデンにて2022年12月7日時点で23歳7日であったスパイク、そして、『史上最高齢の犬』の記録は前述のブルーイーで、1939年11月に死去した時点で29歳5か月でした。

ラフェイロ・ド・アレンティジョは、ポルトガル南部原産の護畜犬種のひとつです。
その歴史は古く、ローマ人がイベリア半島にやってきた際に一緒に連れてこられた犬が元となっているという説や、それ以前から現地の遊牧民によって飼育されていたという説などがあり、よくわかっていません。
主に牛や羊を狼や家畜泥棒などから守る護畜犬として使われていた使役犬の1種です。
現在はFCIにも公認され、国際的にも知られるようになってきているものの、家畜を危険から守る護畜犬としての獰猛な一面も残っており、初心者が手懐づけることが難しいといわれています。
しかし、その性質は作業犬としては人気が高く、獰猛な性質があるからといって、必ずしも性質を和らげる必要が無いことを示している犬種の一つとされています。

ラフェイロ・ド・アレンティジョ(ウィキペディア)

ラフェイロ・ド・アレンティジョ(ウィキペディア)

老化のサインを見逃さないように

大型犬では5歳頃から、小~中型犬では7歳頃から高齢期を迎えます。
いつまでも可愛く愛らしい外見からは、年齢の重みを実感しにくいかもしれません。
老化は病気ではなく、自然に起きる状態ですが、飼い主の心がけ次第で、老化の進行を遅らせ、高齢になっても元気に過ごすことができます。
そのためにも老化のサインを見逃さないようにすることが大切です。

以下は一般的にいわれている「老化のサイン」チェック項目です。

  • 散歩に行くとすぐに疲れた様子で息があがる
  • 飼い主への感心が薄れてきた(呼んでも反応しない、おすわり・待てなどの指示に従わなくなってきた)
  • 昼間、寝ている時間が増えた
  • 毛が白っぽくなってきた
  • 飼い主から離れない(分離不安)
  • 理由もなく吠える、夜鳴きをするようになった
  • 皮膚や毛のつやが失われてきた
体や心におきる老化による変化を見守る

【散歩】
高齢になると筋肉や骨の量が減少してきます。今までより散歩を好まないかもしれません。嫌がるから歩かせないのでは、さらに筋力が衰えてしまうので、怪我や病気でない限り、散歩にでかけましょう。
五感を使う散歩は脳の刺激にもなるので、散歩コースを時々変えることもお勧めです。
寒い季節は出かける前に関節など優しくマッサージしてあげると、温まり動きやすくなるでしょう。

【食事】
心臓や消化器官の機能も低下するので、塩分を控えた、消化の良い噛み易い食事を与えることが必要になります。少量ずつ何度かに分けて与えるのも良いですね。
犬の食欲を刺激するのも大切です。体温と同じ温度に温めたり、においや香りをつける方法もあります。
今までしなかったような拾い食いや、おもちゃを誤飲するなどの行為も出てきます。
散歩ルートや家の中をよく点検して、飲み込んだら危険なものを取り除くことをしてあげましょう。

【不安】
毎日の生活が退屈だと人間同様に犬もぼける事があります。
高齢になると子犬の時に教えたしつけを忘れることがありますが、根気よく優しく再度しつけていきましょう。
飼い主さんがゆったりした気持ちで接してあげることで、高齢犬の不安も解消されます。

まわりに人がいないと不安になって鳴くことがあります(分離不安)。
このような場合は、犬が安心できる場所を作り、リラックスできるようにすると良いですね。
飼い主さんのにおいのするタオルや毛布など置くと安心できるでしょう。

聴力や視力が衰えると不安な気持ちになるのは人間も犬も同じです。
ケガを防ぐためにも家具の配置を見直したり、フローリングの床が滑りやすく危険ならパネルカーペットを敷くなど工夫しましょう。

犬の顔まわりを触ろうとすると、人間の手の動きを恐れ、自分を守る行動として咬むこともあります。
体や心に現れる不安を少しでも和らげてあげられるよう、飼い主さんと共に安心して暮らせる環境を整えてあげることが大事ですね。

子犬の時から健康管理

元気で長生きしてもらうためには、やはり子犬の頃からの生活習慣が重要です。
散歩にでかけ、一緒に遊び、規則正しい生活習慣をつけて、愛犬が飼い主を信頼して精神面の絆も深まる日々を過ごしていくことを重ね、お互いが気持ちよく過ごせる環境を整えましょう。

体のケアは、特に体調が悪くなくても、年に1回は健康診断を受けましょう。
動物病院と定期的にコミュニケーションを取ることにより、獣医師から健康アドバイスなど受けやすくなるでしょう。

自宅でできるケアは、歯磨きの習慣をつけて歯石を予防すると良いです。
人間も同じですが、歯の痛みで食欲低下、様々な病気の引き金になることがあります。
人間と異なり、犬の場合は3~5日で歯垢から歯石になることがあります。
歯石になると家庭では除去できません。必ず動物病院で除去してもらいましょう。
犬の歯磨きを始めるのは早いほど良いですが、遅すぎるということはありません。
スキンシップの一環で、飼い主も愛犬もリラックスできる環境にして、楽しく歯磨きの習慣をつけましょう。
噛んだ経験のある犬や、飼い主が「噛まれるかも」と不安や心配がある場合は、動物病院に相談することから始めてください。

こんな症状は赤信号!
  • 口臭がひどい
  • 歯が白くなってきた(歯垢がつきはじめた)
  • 歯が濃黄色になる(歯石の形成)
  • 歯肉が赤く腫れる
  • 歯肉からの出血
  • 歯がぐらつく、欠けたり抜けたりする

子犬の頃から楽しく歯磨き習慣をつけていれば、成犬になっても続けやすいでしょう。
シニア犬は免疫力が低下しているので、歯垢・歯石を放っておくと歯周病が進行しやすいため、様々なトラブルや内臓疾患の原因にもなります。
犬は非常に我慢強いため、歯周の病気は飼い主に伝わりにくいので毎日のケアで気づいてあげることが重要です。
犬は何より飼い主さんとのスキンシップが嬉しいでしょう。体を優しくなでて、普段と変わったことがないか、痛がる箇所は無いか、おできが無いかなど観察しながら、仲良くできるなら一石二鳥ですね!

 

 

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